ポケットティッシュ

泳ぎたい!!!
これは常々思っていた。
今日こそは、と思って水着も買った。

プールで泳ぐのなんて、いつぶりだろう?
高校生以来かな?
とにかく胸を躍らせていざプールへ・・・。

おっとその前に、
水着を下に着込んでおこう!
そうすれば、プールについてすぐ泳げる。
我ながら何て賢いんだろう♪

そして、プールに到着!
えっと、まずお金は先払い・・・。

「・・・・。」

足りない・・・。
所持金318円。
近くにATMもない。

そのまますごすごと、家に帰った。
洋服の下に仕込んでいた水着が苦しい。

我ながらなんて間抜けなんだろう。


  〜1週間後〜

今度こそお金を握り締め、プールへ!
久しぶりに思いっきり泳いだ!
もぅ大満足!!!
シャワーをあびて、ロッカーへ・・・。

「・・・・。」

タオルがない!!!
探しても無駄だ・・・。
鞄に入れた記憶など微塵もない。

中にあるのは、ポケットティッシュ一つだけ・・・。


あ♪♪♪
サウナがある!
そこで、自然乾燥!

ん???
『水着の着用及び全裸での私用を禁止します・・・』
見れば、
全員タオルを巻いている・・・。
くぅ!!!
「タオルがないと、何もできないんですかっ!!!」
叫びたかった・・・。

人のタオルがこんなにも羨ましかったことはない。


私にあるのは、ポケットティッシュ一つだけ。

仕方ない・・・。

私は、大事に大事にポケットティッシュを使って、
身長→165cm
体重→過去最高kg
の巨体を拭いた・・・。

人が来ると、慌てて手を止め、
「何も、変なことはしてませんよ!」
という振りをする。

そんな自分にむなしくなった。

重たくなったポケットティッシュ
何度も絞ったポケットティッシュ

ここのプール
けっこう古いけど、
ポケットティッシュで体を拭いた人間は・・・

私だけだろうな。


我ながらなんて・・・・。

悪友

深夜の電話。
友人からだ。
「今から家に行くから!」
と言われた。
何でも大切な用事があると言う。

指定された人気がない場所まで出て行くと、
友人が4人待っていた。

わざわざ、こんなところまで呼び出して、
しかも少し様子が変だ!
普段より、ちょいと改まっている。
「仕事大変でしょ?楽になりたくない?」
なんて、突然やさしい言葉!!

あっ!!!
これは、絶対何か私を喜ばせるビックプレゼントがあるに違いない!
こんなとこに呼び出したくらいだもん!
しかし、今日は誕生日でもない・・・。
あっ♪
でもちょっと遅れた誕生日プレゼントという魂胆ね♪
うふっ。

私は瞬時に悟った。


「イヤー、別にそんなことないよ☆」
なんて言ってると、
「嘘だー、いろいろあるでしょ???」
なんて言ってくる.

いいから、早くプレゼントをっ!!!
とじれったく思っている私を察したようだ。
友人のうち1人が洋服の中に隠していたものを私に手渡した。

「ん???」
暗闇でよく見えないが、赤くて、厳めしい・・・顔???
というか、そこに出されたのは、紛れもなく
☆鬼のお面☆・・・

皆の手を見ると、そういえば全員が‘グー’をしている。
私がこのお面をつけたところで、手の中にある豆を投げつける・・・。
シナリオが見えた。。。

「ちょっと!!!もうわかったんだけどっっ!!!」
と怒った私。
でも、ここでかぶらなかったら、ノリが悪い。
23歳にもなって、鬼の面をかぶっておどけて見せるか、
それとも、
ノリが悪くなったと友人らから後ろ指をさされるか・・・。

私は、前者を選んでしまった・・・。

面をつけたとたん、体に痛みが走る。
「鬼はー外ぉー」と言う声を聞きながら、
鬼の目の丸い穴から見えた友人らの輝いた顔!!!
キー!!!
何て憎らしいのだろう!!!

写真までとられた挙句、
「これでもう、大丈夫!悪い鬼退治してあげたよ♪」
と感謝してと言わんばかりの言い方。


本当に豆を撒くだけ撒いて、
「またね♪」
と帰っていく友人らの背中に向かって
「こういうの本当に迷惑だからっ!!!」
と叫んでみたが、
「好きなくせにぃ♪」
と返され、
来年もまた来るのではないかという恐怖だけが残った・・・。

時計の針が
2月3日を刻み始めたばかりのことだった・・・。

正義の味方

ゴキブリは嫌い。
多くの女性は、口をそろえて言う。
もちろん私もその一人。
ゴキブリとは比べ物にならないほど、どっしりとした体つきのくせに、
「キャーキャー!」と
その時ばかりは
自分の音域を遥かに超えたブリッコ声がでる。

しかし、こんな私も
時には勇敢になる!
それは、ゴキブリ発生時,
男女問わず、その場にいる人すべてが
ゴキブリ嫌いのとき。

「皆を守らなければ!」
という感情が生まれ、
「大丈夫,私に任せて!」
と一人で果敢にゴキブリと戦ってきた。


「周りの人より自分は強いのだから!」
といった、とんでもない勘違いが、
私の背中を押す。
そして‘自称’正義の味方の自分に酔う。

「弱い人を守らねば!」
この性格は,どうやら母親譲り。


母親と街を歩く時、
「お母さん荷物持つよ」
必ず声を掛ける。
すると、
「いや,大丈夫。梢は大丈夫?」
と言う母。

なんて美しい親子愛・・・。


でもそれは、ここで終わっていればの話。
しかしお互いに、相手は自分よりもか弱いと思っているから、
そうはいかない!

「お母さんに、荷物を渡しなさい。」
母は,私のバックを取り上げる。

「大丈夫って!!!」
とすかさず取り返す私。
と同時に母の荷物も取る。

「いいからっ!」
とまた母から、荷物を取られる。

「お母さんは疲れやすいでしょっ!」
と力ずくで、また取り返す。

「まだ若いよっ!」
とまた、取られる。

「私のほうが力あるから!」
と隙を見て取り返しても、

「いーや、梢より力持ちよ!」
といってまた荷物を取ろうとする母。

「ちょっと、やめてよっ!!!」
私も必死で、荷物を離さない。


気付けば
醜い荷物の取り合い。


相手を思いやって始まったのに、
終いにはお互いに腹が立ってしょうがない・・・。

通行人の呆れた視線・・・。


自称正義の味方は、一人に限る・・・。

いつか仕返しを・・・

中学校時代の友人達と、
宮崎の夜の海へ・・・。


何キロも続く長い砂浜。

粉のようにやわらかく細かい砂は、まだ少し暖かい。

目の前には、海と空、
そして遠くの観覧車の明かりだけ。

潮の香りと、波の音に包まれながら、
遠くであがる花火に心奪われる。

ああ・・・、
まるで、映画の中のような美しい世界!


ジーンズを捲り上げ、
膝まで海の中へ。

もうすっかり
環境にも、自分にまでも酔っている。


*もう今日は最高*

と思いきや、
「人生一寸先は闇」
とは、まさにこの事っ!
その時、悪夢が・・・!!!

「うおりゃー」
という掛け声とともに
ものすごい勢いで近づく黒い影!

 バッシャーンッ!!!!

洋服も着たまま、
時計もつけたまま、
コンタクトもつけたまま・・・
とにかく、すべてを身にまとったまま、
水中に沈められた私・・・。


信じられない!
この年になっても、
まだこんなことをされるなんて!

着替えもない、タオルもない。
最悪の状況!
それに比べて友人達は皆、
ちゃっかり泳ぐ格好をしているではないかっ!
どうだと言わんばかりの笑顔が並んでいる!

悔しい!
完全にやられた!!!
人を甘く見ていた!


帰りの車の中で悪友達は、
一人だけ海水まみれの私に、
一瞬すまなそうな雰囲気を出したかと思うと、

「こんなことできるのも今のうち!
 大人になったらできないよ!」
と、早くも開き直っている。
もう十分大人ではないかっ!!!

その上、自分達がしたことを棚に上げ、
「災難だったね!」
と、他人事。

終いには、
「もっと後先考えれば?」
と、私にダメだし。


悔しー!!!



しかし、一番悔しいのは、
こんな目にあってもなお
「また早く会いたいっ!」
と思ってしまうことだ・・・。

ダイエット


食事の量を朝5:昼3:夜2の割合にすれば,
痩せるらしい!!!

この情報を信じ、
早速実行に移した。

そのため、朝は今まで以上に食べる。

昼と夜の分も今のうちに・・・と思い、
これでもかっ、というほどの量を詰め込むため、
午前中はいつも吐き気を催し、
体調が悪い・・。

お昼になると、
朝から食べ過ぎているせいで、
いつもより、食欲がない!
はずだった・・・。

しかし、一口食べ物を口に入れると、
しつけがいいのか、
食い意地が張っているのか、
今まで通り、一粒残さず食べてしまう・・・。


夜になると、「2の割合、2の割合」
と思いながらも、
いったん食べ始めると、
もう途中の記憶はない。
今まで通り、一粒残さず食べてしまう・・・。


*ダイエットは諦めずに続けることが肝心*

「明日こそはやれる!」
と信じ、また翌日大量の朝食。

そしてまた同じ繰り返し・・・。


続けること1ヶ月。

実際に実行できたのは、
朝御飯を大量に!ということだけ。

今となっては、大量の朝食が当たり前・・・。
お陰で、
胃は大きくなり、
日に日に食欲は増す一方。
日に日に体重も増す一方。

*中途半端なダイエットはさっさと諦めることが肝心*

バイキング

姉と夫の義兄と3人でビュッフェに行った時のことである。

お店に入るや否や、早く注文をっっ!
と言わんばかりに店員を目で追う。
そして、「ビュッフェ3つ」と注文を言い終わるのと同時に席を立つ。
お店の中はまさに戦場。

私と姉の間には言葉を掛け合わなくとも、役割分担ができている。
姉がスープコーナーに向かったら、私はサラダへ。

テキパキとした動きと、臨機応変の対応。
普段の私達からは、想像を絶する機敏さである。

両手のお皿には今にも溢れんばかりの量の食べ物。
それでも、まだまだといったような欲深い表情で
目をぎらつかせている姉と私。
自分達の醜さに気付かず、
むしろここでは優秀な戦士だと言わんばかりにテーブルに戻る。
が、しかしそこには私たちにとって信じられない光景が!!!

義兄である。
席を離れず、優雅にタバコを吸っているではないかっ。
戦場でこんなにものんびりしているなんて・・・。
「あなたは、ドリンクの担当でしょっっ!」
私たちは、言葉にこそしなかったものの、
もちろん彼にも役割分担は暗黙の了解だと思っていた。

バイキングにおける心得が何もわかっていないと、
瞬時に彼に対しての期待を捨てた姉と私。
失われた一人分の戦力を補うため、
さらに焦って動き回った。


デモ、ちょっとまてよ?
時間制限も特にない。
料理もまだ十分残っている。
なのになぜこんなに焦っているのだろう???

優雅な義兄の背後で、必死に動き回る自分達って
ちょいと、お馬鹿さん?


食べ放題という言葉にとらわれすぎて、
頭の中では「モトを取る!」という言葉のみが響いていた。

ゆっくりと楽しい話もせずに
夢中で食べることのみに専念。

自分の限界以上に食べ物を詰め込み、
お店を出た後の体調は絶不調。

その上、また太ってしまったと
自己嫌悪に苦しむ。

終いにはダイエットグッズに手を出し、
かえって高くついている。

これがいつもの流れだった。
いいことなしじゃないかっ!



初めは「戦力にならないっ」
といった冷ややかな視線を2人から浴びていた義兄は、
お店を出るころにはすっかり
「育ちがよく、思慮分別のある人!」
と大変崇められていた・・・。

あいつ

またアイツに悩まされている!
もうかれこれ、5年になるだろうか?
こちらが少しでも油断すると、その隙を狙って確実に現れる。

最近は、図々しくも改名を要求してきた。
もうあなたは、過去の名前を使用することはなりませんと、言わんばかりに・・・。

これからは「にきび」ではなく、「吹き出物」と呼ばないといけないらしい。


3週間前、
鼻のてっぺんの中央に痛みを覚えた。
「またアイツだな!」と鋭く察知した私は、
こういう時は、栄養を取って、ゆっくり休むに限ると思い、実家に帰ることにした。

しかし、その次の日、真っ赤なにき・・いや、吹き出物が、
丁度鼻の真ん中に、直径5ミリの大きさで、堂々と姿をあらわした。
その時のアイツのアピール度は、過去最高か?と思われるほどだった。

体の中心線上にそんなに大きいものができるのは危険だ!
と心配した母が、「家庭の医学」を手にした。
吹き出物に良くない食べ物の欄で、母が「はっ!」としたのを私は見逃さなかった。
そこには、「桃とバナナ」との文字があった。
桃とバナナ・・・???
あっ!

昨夜、ビタミン、ビタミンと吹き出物を意識して母がだしてくれたのは、
・・・すももとバナナだった。
「あれは、すももだったから、関係ないっ!」
と言い張る母に、
「すももも、ももも桃のうち!!!」
と、日頃の滑舌練習の成果を披露する意味でも、張り切って言い返したが、
案の定、格好悪くつっかかってしまった。

そんなこんなで、ものすごい勢力を持ったアイツは、
皮膚科の先生の威力にも屈することはなかった。

コンシーラーで何とか隠せたものの、かなりの格闘の日々が続いた。
ちょっとでも、コンシーラーに手を抜こうものなら、
鼻ピアスと間違えられることもあった。
パーマンコピーロボットとも言われた。
ネタ的にはちょっとおいしいと思いながらも、
このままでは、モザイクなしではテレビに出られないのではないかと、
一人胸を痛めていた。

しかし、はや3週間。
もう大分おとなしくなった。
最も勢力のあるときには、ズキンズキンとの痛みとともに、
自分の元気よさを主張していたアイツ。
どう考えても、人格があるようにしか思えない!
しかも、とっても意地悪な・・・。


もう金輪際
ただでさえいっぱいいっぱいの私を、苦しめるのはやめていただきたい!