あいつ

またアイツに悩まされている!
もうかれこれ、5年になるだろうか?
こちらが少しでも油断すると、その隙を狙って確実に現れる。

最近は、図々しくも改名を要求してきた。
もうあなたは、過去の名前を使用することはなりませんと、言わんばかりに・・・。

これからは「にきび」ではなく、「吹き出物」と呼ばないといけないらしい。


3週間前、
鼻のてっぺんの中央に痛みを覚えた。
「またアイツだな!」と鋭く察知した私は、
こういう時は、栄養を取って、ゆっくり休むに限ると思い、実家に帰ることにした。

しかし、その次の日、真っ赤なにき・・いや、吹き出物が、
丁度鼻の真ん中に、直径5ミリの大きさで、堂々と姿をあらわした。
その時のアイツのアピール度は、過去最高か?と思われるほどだった。

体の中心線上にそんなに大きいものができるのは危険だ!
と心配した母が、「家庭の医学」を手にした。
吹き出物に良くない食べ物の欄で、母が「はっ!」としたのを私は見逃さなかった。
そこには、「桃とバナナ」との文字があった。
桃とバナナ・・・???
あっ!

昨夜、ビタミン、ビタミンと吹き出物を意識して母がだしてくれたのは、
・・・すももとバナナだった。
「あれは、すももだったから、関係ないっ!」
と言い張る母に、
「すももも、ももも桃のうち!!!」
と、日頃の滑舌練習の成果を披露する意味でも、張り切って言い返したが、
案の定、格好悪くつっかかってしまった。

そんなこんなで、ものすごい勢力を持ったアイツは、
皮膚科の先生の威力にも屈することはなかった。

コンシーラーで何とか隠せたものの、かなりの格闘の日々が続いた。
ちょっとでも、コンシーラーに手を抜こうものなら、
鼻ピアスと間違えられることもあった。
パーマンコピーロボットとも言われた。
ネタ的にはちょっとおいしいと思いながらも、
このままでは、モザイクなしではテレビに出られないのではないかと、
一人胸を痛めていた。

しかし、はや3週間。
もう大分おとなしくなった。
最も勢力のあるときには、ズキンズキンとの痛みとともに、
自分の元気よさを主張していたアイツ。
どう考えても、人格があるようにしか思えない!
しかも、とっても意地悪な・・・。


もう金輪際
ただでさえいっぱいいっぱいの私を、苦しめるのはやめていただきたい!