有言不実行


友人が海外に留学することになった。
出発まで、もう2週間を切っている。
一度行ったら2年は帰ってこないという・・・。



その友人とは、もう10年以上の付き合いになる。
青春時代の酸いも甘いも共に経験してきた仲。

出会った頃は中学生。
彼女は常に人気者だった。

どんなに日が高くても、
放課後はパジャマで街を歩いていた彼女。
夏場はお兄ちゃんのトランクスを
短パン代わりに街ではいていた彼女。
部活動の試合の日、
ジャージに毛皮のブーツを履いてきた彼女。
いつでもどこでも処構わず
奇妙な踊りを披露してくれた彼女。


そんな滑稽な人間が日本から姿を消すとなると、
随分と寂しくなる・・・。


しかし実は私には、
留学の話はなくなるのではないかという予感がしている。


彼女の「○○します!」宣言は、
今まで何度となく実行されずにきたからだ。


中学3年生の時は、県外の高校に行くと言いだし、
学校の先生に資料集めなど散々骨を折らせた後、
急にやっぱりやめたと、県内の高校へ。

高校3年生の時は、海外に留学すると宣言し、
結局なぜか三重県へ行った。

しばらくして上京し、
今度はトリマーの専門学校に行くと張り切っていたが、
気がついたらパチンコ屋さんの正社員となっていた。

その後、絵の才能を認められ、
雑誌に連載をもつことになるが、
すぐに飽きて、花屋さんで働くことを選ぶ。

一生花に携わることに決めたと、
フラワーアレンジメントの学校に通い始めたまではよかったが、
それも途中で止めて、
福岡で就職してもいいなと言い出す。

福岡に来るのねと、私が心の準備をした矢先、
東京の英会話学校で受付をするねと連絡が入る。

そして現在の海外留学宣言ときた。


この海外留学宣言に関しては、
ここ5年くらいずっと聞かされている・・・。

何度も延期になっていたので
周りは誰も信用してなかったが、
今回はすでに、お金も振り込んだそうだ。

これは、今までにはなかった展開。



しかし、お金を振り込んでいようが、
彼女のこととなると、行かないような気がしてならない。
行ったとしてもすぐ帰ってきそうだ。

それほど、「有言実行」という言葉が似合わない彼女。

こうして改めて思い返してみると、
まだまだ書ききれないほどの“宣言”が出てくる。


「一つくらい実行したら?」と彼女に呆れつつも、
いざ出発の期日が迫ってくると
今回だけは、願ってしまう自分がいた。



どうか、いつもの“口だけ”でありますように・・・
このまま、日本にいてくれますように・・・