選ばれし者

この世の中には、
偶然とか,絶妙のタイミングとか、
予期できない不思議なことがたくさん存在する。
しかしそれは、必ずしも好ましいこととは限らない!

天神を歩いていた時のこと。
デパートに囲まれた繁華街は、
多くの人でごった返していて、
私もその流れに従って歩いていた。

暑さも和らいで涼しい夕方。
少しだけ髪を揺らす風に、心地よさを感じながら、
なんとなくいい気分で歩いていると・・・

その時!!!


携帯電話を握った右手の甲に、
‘ぬくもり’を感じた!

「ビクッ」と一瞬肩をすくめた後、
親指の付け根に見えた
直径2センチほどのものは・・・・


糞だ!!!


‘できたて’のため、いつも目にするものよりも、
多少みずみずしいが、
この,色・形は
いつも我が家のベランダに残されているものと同じだ!


よりによって,どうしてココに?

大通りの人ごみの中なのに、
じっとしていた訳ではないのに、

どうして?どうして?どうして?どうして?



どうしようもない怒りが込み上げたが、

‘できたて’故に、
振り落とせば服に付きかねない。

動かせない右手と、
鞄でふさがっている左手。

拭き取りたいが両手が使えず、
人の波にも逆らえず、

とった手段は、現状維持・・・・。


硬直した右手に糞を乗せたまま、
とりあえず、目的地のバス停まで
10分ほど歩き続けた。


あたたかさも、潤いも、透明感もある・・・。
その新鮮なプルプル感が、憎らしかった。


スーツを身にまといながらも、
手の甲の糞を、そっと揺らさず運んだ私・・・。

すました顔して歩きながらも、
手の甲には‘できたて’の糞・・・。


速歩きのその訳は、
「糞が乾くのが怖かったから」と

いったい誰が気付いたろうか?